あなたは「一万円選書」をご存じでしょうか?

http://iwatasyoten.my.coocan.jp/index.html

北海道のとある書店で行われている企画です。

メディアで話題になり、応募者多数のため抽選なのですが、当選した人にはメールでカルテが送られてきます。

そのカルテに、自分が今まで読んだ中で好きだった本、嫌いだった本を記入したり、自分の今までの人生についてや現在の状況、未来への希望や考えていることなどを記入して送り返します。

そのカルテを見て、店主さんが約一万円分の本を選んで送ってくださるというサービスです。

私のために選んでくださった十数冊の本

数年前、私は幸いにも当選しました。

今までに読んだ本を記憶の底から掘り返し、現在の心境や未来について、カルテを心を込めて書き上げ、本の到着を楽しみに待ちました。

そしてある日、店主の岩田さんが私のために選んでくださった十数冊の本が届きました。

今回ご紹介する本は、その「一万円選書」で出会った一冊です。

「失敗した。電車で読む本ではなかった。」

東京に電車で出かける用事があり(コロナ前です)、群馬県からの長い旅のお供にと、一万円選書でまだ読んでいなかった一冊を、何も考えずに本棚からパッと鞄に入れて出かけました。

高崎線で座席を確保し、落ち着いたので鞄から先ほど掴んだ本を取り出してみました。

帯を読んで・・・

 

「失敗した。電車で読む本ではなかった・・・」

 

それでも私は、読むのを止めることもできず、時々周囲を見回すことによて自分の意識を逸らしながら涙をこらえ、洟をすすりながらあっという間に第一部を読み切りました。

私が読んだ一冊は・・・

「障害を持つ息子へ~息子よ。そのままで、いい。~」
神戸 金史(著)/ブックマン社

2016年7月相模原の障害者施設で起きた殺傷事件。

「障害者なんていなくなればいい」

そういった犯人。

この本は、報道記者であり、ご自身に重度の自閉症のお子さんがいらっしゃる神戸さんが、相模原の殺傷事件を受けて個人的にFacebookに投稿した詩と、長い時間取材を重ねてこられた、障害のあるお子さんがいらっしゃるご家族の物語です。

―社会の役に立つ人間―

生きる価値、判断基準はそこなのでしょうか。

私自身、どれだけ社会の役に立っているのでしょうか。

「あふれる笑顔も 大粒の涙も
 すべてが愛しい それだけさ 他に何もない」(B’z)

愛する人が、大切な人が一人でもいるならば、きっと同じように思うのではないでしょうか。

-母子無理心中事件の真実は-

わが子を手にかけるなんて、信じられない・・?

私は何を知っているのでしょうか。

私が知っていることなんて、ほんのわずか一部に過ぎないのです。

「認知症サポーターキャラバン」って聞いたことありますか?

認知症をきちんと理解しよう、という研修会なのですが、受講されたことはありますでしょうか。

ちなみに私は、同じような時期にたまたまですが、3回も受講しました(^^)

研修会では、認知症になって起きている脳の変化を簡単に説明してもらったり、認知症の症状についてやサポートの仕方についてのお話を聞きました。

今年の春、91歳で亡くなった私の祖母も認知症でした。

「あんたはわかる。そっくりじゃ。」

遠方に住んでいるので会える機会は少なかったのですが、私が最後に会ったときに祖母が私を認識できたかどうか、わかりません。

言葉を発することができなくなっていたので、意思を伝えることができない状態でした。

まだ認知症の症状がそれほど進んでいなかった頃、久々に会いに行った私に祖母は

「あんたはわかる。そっくりじゃ。」

と言ってくれました。

「そっくり」の意味はわかりませんが、祖母の記憶の私にそっくり、という意味ではないかと想像しています。

しかし、私をわかるといった傍から

「ここへ来たのは初めて?」

と繰り返し質問します。

「初めてじゃないよ」

と何度でも答えました。

祖母の寂しそうな、不安そうな瞳は、今も記憶に残っています。

あんた「は」わかる

といった祖母。

自覚があったのではないかと思っています。

決して言わないけれど。

介護者は過酷だと思います。
心の余裕もなくなってしまうかもしれません。

もし自分が認知症患者さんの近くにいるとしたら。
介護者の近くにいるとしたら・・・。

まずは、知ろうとすることを大事にしたいと思います。